食堂かたつむり  
2011.09.09.Fri / 20:29 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






美味しいものを食べる。
すると満たされるのは、空腹だけではない。
心が癒され、さらに豊かになる。
素直になれたり、昔の良かった頃の感情が蘇る。

美味しいものを食べることは、
きっかけに過ぎないのかもしれないが、
しかし、きっかけを与える力を持つことも、
また、事実なのだろう。

そして食事とは、命を食べること。
それは、とても残酷な反面、崇高であり、幸せなこと。
命を食べているという意識が、食べ物の味を、
さらに深いものにしている。

様々なエピソードをファンタジックに綴る事で、
食べることを描いた映画。





おっぱい山のふもとに開店した、食堂かたつむり。
地元の食材を生かした料理を振る舞う、
一日に一組の客しか取らない、予約制の食堂。

その食堂を営む、倫子さん。
信じていた人から裏切られ、全てを奪われ、
しゃべることが出来なくなってしまった、女性。
美味しいものを食べることによって、起きた奇跡、幸せな出来事。
出て行ったはずの妻から電話が掛かってきた。
片思いの少年と恋人になることができた。
常に喪服をまとっていたおばあさんが人間らしい感情を取り戻せた。

それらは、もともとそうなる運命だったのかもしれない。
そんな事が起こる要因が、すでにあったのかもしれない。
けれど、美味しいものを食したことが、
きっかけを与えたのも、また、事実なのだろう。



倫子さんの母親である、ルリコさん。
とてもドライなようでいて、実は娘想いの母親。
しかし、素直に、その想いを伝える事が出来ないでいる。

お金を貸してと娘に頼まれた時、
お札を渡して、ペットであるブタのエルメスにパンを買うように命令したのは、
残ったお金を使って欲しいからであり、
直接渡すのが照れくさかったのだろう。
それは、食堂の料理に虫が入ってしまい、落ち込んでいた倫子さんを
励ます時も同様なのだろう。
けれど、その照れ故に、表現がガサツになり、
倫子さんは誤解してしまっていたのだろう。
けれど、最後には母親の想いを知ることになる倫子さん。


家族同然のエルメスを食べることにしたルリコさん。
ちょっと唐突感が否めないものの、
このエピソードが、この映画を、
より深いものにしているように感じられる。
きっと、ルリコさんは、エルメスと同化したかったのだろう。
自分の中にエルメスを感じつつ、
共に生きて、共に旅立ちたかったのだろう。



お妾さんの食事のシーンが素晴らしい。
食事が進むにつれて変化してゆく、その顔、表情、姿勢。
死から生へと徐々に転じる状況を見事に表現。
このシーンにおける江波杏子さんの演技はとても光っていたように感じられた。



とてもメルヘンチックに描かれて、
そのバランスも絶妙に感じたが、
それ故に説明不足の感は否めない。
特にミドリさんと仲直りできたのは、なぜか?
やはり、彼女にも倫子さんの食事を食べてもらい、
それがきっかけで変化した、というような感じでは、
まとめる事が出来なかったのだろうか?


最後には言葉を取り戻す倫子さん。
死んでしまったハトを食した事がきっかけだ。
それは、その美味しさ故に、そして、ハトの命を食した故に。
その命に感謝し、美味しく調理し、残さず食べる。
それらは、ハトの供養にもつながる行為なのだろう。

様々なエピソードをファンタジックに綴る事で、
食べることを描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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