2011.10.27.Thu / 22:18 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






一点の曇りもなき想いをもつ人間。
そんな人間など、存在はしないだろう。
けれど、純粋すぎた男は、
一点の曇りなき想いを求めては、
自分に絶望し、他人を疑う。

偶然巡り会った女性。
彼女こそは求めていたはずの人。
しかし、結婚してみて徐々に不安と疑念が頭をもたげる。

自分は他人を信じることができるのか?
自分は自分を信じることができるのか?
この男にとっては、限りなく可能性が低い、これらの命題を目の前にして、
人生を放棄し死にたくなる、けれど、死に切れないし、死ぬのが怖い。

しかし、
「私たちは生きていさえすればいいのよ。」
人は白、黒と簡単には割り切れない。
むしろ灰色の生き物だ。
そんな灰色という曖昧さを認める為には、
そして自分が許せない自分の汚さを受け入れるには、
他人から受ける慈愛の心が必要なのだろう。
そんな慈愛の心を受け入れられれば、人は生きてゆけるのだろう。

人の心の弱さ、しかし、生きる為の強さ。
心に矛盾を抱えた人という生き物の心情が印象的な映画。




幼き頃、神に見捨てられたという恐れを抱いてしまった男、大谷。
それは、きっと自分の心が汚れているから。
神は、自分の心の汚さを見抜いているから。
自分を受け入れてくれる絶対的な人が欲しい。
けれど、自身の汚れた心を受け入れる人など存在しない。
自分自身も、そんな自分を受け入れることができない。
自分に絶望し、他人を試し、そして、疑う。
だからこそ、死にたい。人生を放棄して。
けれど、死ねない。いざとなると死が怖い。
心中の途中で首が締まり苦しむ大谷。
死ぬことは苦しいこと。そして怖いこと。
この時大谷は、あらためて、
それを思い知ったのではないのだろうか?
交番で巡り会った女性、佐知。
自分は正しく生きてきた人間。それなのに、
たった一度の間違いで自分の一生はダメになってしまうのか?
それは、変だと力説する女性。
大谷は、佐知の自分を信じる強さと信念に魅かれたのだろう。

けれど、大谷は、この時気づいていたのだろうか?
自分の罪を正当化する強さとは、
つまりは、心に曇りがある自分を、認め、受け入れるということなのだ。


結婚をして、生活を共にし、しかし、
大谷は佐知を信じることができない。
特に、佐知が働き始めてからは、疑惑をぬぐうことができない。
わざと岡田を家に誘い、絶好の機会を与えて、佐知を試す。
そして、疑念が的中してしまったことに絶望し死を求める。


「女には幸福も不幸も無いものです。」
「男には不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです。」

女は強くて、この世を信じられなくても生きてゆける。
だから疑ったり絶望したりはしない。不幸にはならない。
けれど、男は、生きてはいけない、そして、常に疑う。
だから常に不幸なのだ。
極端過ぎるかもしれないが、大谷が佐知との生活で得た心情なのだろう。


大谷とは対照的に佐知を見捨てた、佐知の昔の恋人、辻。
保身に走った自分を許して欲しい。
その為に、佐知の事が忘れられない。
自分を許す他人の存在。
罪を忘れる為には、そんな存在が必要なのだ。

夫の為にしたたかに昔の恋人を利用し、
そして昔の思い出ごと、グッドバイした佐知。
けれど、ついに自分は裏切られてしまったことを知った大谷。

しかし、
「私たちは生きていさえすればいいのよ。」
人は白、黒と簡単には割り切れない。むしろ灰色の生き物だ。
清い行いもすれば、過ちも犯すだろう。汚い部分も持っている。
子供の為に貰ったサクランボを食べる事だって平気でする。

そんな灰色という曖昧さや、自分が許せない自分の汚さを受け入れるには、
他人から受ける許しと慈愛との心が必要なのだろう。
そんな慈愛の心を受け入れられれば、人は生きてゆけるのだろう。
逆に、そんな慈愛の心を得ることができなければ、
自分自身を愛することは出来はしないのだろう。
だからこそ、大谷には佐知が必要なのだ。

人の心の弱さ、しかし、生きる為の強さ。
心に矛盾を抱えた人という生き物の心情が印象的な映画。


* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
No.928 / タイトル は行 /  comments(2)  /  trackbacks(0) /  PAGE TOP△ 拍手する
COMMENT TO THIS ENTRY
- from しげちゃん -

ヴィヨンの妻、いい映画です。

ヤンさんの映画紹介記事の書き方・・
好きだな~。 

2011.11.03.Thu / 11:46 / [ EDIT ] / PAGE TOP△
- from ヤン -

しげちゃんさん、こんばんわ。

ヴィヨンの妻、よい映画でしたね。
根岸監督はすごく優しい眼差しを持った監督だと感じています。
映画からは、厳しくも、しかし、優しさを感じることができる気がします。

なんだか、私のつたない映画感想を気に入っていただけたようで、
嬉しいです。ありがとうございます。

それじゃ、また。

2011.11.03.Thu / 22:50 / [ EDIT ] / PAGE TOP△

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