半分の月がのぼる空  
2011.12.01.Thu / 20:24 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




私は
一瞬でも長くあなたのおそばに
居たいんです


いつまでもずっと一緒に居たいと願った少年。
だから、かすかな希望を信じて未来に向かって進む事ができた。
将来における後悔など、微塵にも思い浮かべずに。

大切な者を失ってしまった男性。
だから、未来を信じることも出来ず、前にも進めず、
絶望のあまり、他人にさえ諦める事を諭す。

まったく対照的な二人。
しかし、この二人は繋がっている。
それは、愛が深い故に苦しんでいる、という点において。


幸せを求めて懸命に一人の女性を愛した男。
一度は自身のしてきた事を否定してしまっていたが、再び歩き始める。
自分がしてきた事は、彼女を幸せにしてきたという事を理解して。

様々な事が表現されている魅力的で味わい深い映画ではあるが、
人が幸せになる為の道が心に残った映画。







肝炎を患って、その街の病院に入院している少年、裕一。
悪友と病院を抜け出して遊ぶノリの良さと、
しかし、心根には、純粋な優しさを持つ少年。

心臓に父親と同じ病を持つ少女、里香。
長い入院生活の為なのか、とても深い絶望のためなのか、
人を遠ざけて生きている。
しかし、本当は明るくて、よく笑う、笑顔が素敵な少女。
愛する妻を失って絶望の底にいる青年医師、夏目。
激しい後悔と無力感。
それ故に、前に進むことができないでいる男。



この映画には、様々な技巧が施されている。

祐一と夏目が実は同じ男であるということ。

文化祭での代役。そして、プロンプターに語りかける里香。
里香は台詞を忘れたのではなく、裕一に、
この台詞を自分に向けて言わせたかったのだろう。

最後に届けられる里香のメッセージ。
里香はきっと自分が先に逝くであろうことを理解していたのだろう。
手術が成功してもしなくても。
絶望的な状況に居てさえも裕一の幸せを願う里香には、泣かされる。

そして、効果的に使われる、銀河鉄道の夜。

見る人にとっては、これらは鼻に付くかもしれない。
しかし、私にとっては、とても効果的に感じられる。
これらの技巧が、この映画を魅力的で、
とても味わい深いものにしているからだ。



砲台山に行きたかった里香。
それは、きっと死を覚悟したかったからだろう。
生きていても意味のない人生。母を苦しめるだけの自分。
そんな自分は果たして生きていていいのだろうか?

裕一に連れられていった、学園祭。
そこで味わう、長い間夢に見た舞台に立つことができた幸せ。
しかし、無理がたたり、またもや母親に心配と迷惑を掛けてしまう。
そんな自分は果たして生きていていいのだろうか?

妻を生かすために、妻の体にメスを入れ続けた夏目。
辛い思い、苦しい痛みを与え続け、しかし、妻は還らぬ人となる。
自分は妻に叶うはずのない希望を与えてしまい、
より辛い思いをさせてしまったのではないのだろうか?


しかし、それらの答えは、「銀河鉄道の夜」の中にある。


学園祭での無理がたたり倒れた里香は必死に母親に謝る。そして、裕一も。
けれど、母親は、そんな裕一に礼を言う。
娘が心から笑った顔が見れて嬉しかったと。
それが母親の幸せなのだろう。

夏目の回想の中に現れる里香。
日々辛い思いをしているはずなのに、その笑顔は輝いて見える。
里香は本当に幸せだったのだろう。
裕一と共に生きられて。少しでも長く一緒に居られる事ができて。

それらは、銀河鉄道の夜のカムパネルラや、おっかさんと同じ心情なのだ。
だから、悲惨な結果、苦労や心配、苦痛などを超えたところに、
本当の幸せは存在するのだろう。


幸せを求めて、苦難の道を歩んだ人々。
そして、その苦難の道の上でさえ、彼らは幸せだったという事実。
人が幸せになる為の道が心に残った映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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