十三人の刺客  
2012.02.09.Thu / 20:38 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






人は、どのようなことになら、命を掛けられるのか?
とかく世界は複雑で、だから、
正義も人の数だけ存在するのかもしれない。

自らの技量を磨き、鍛え、備え続けた日々。
しかし、その技を使う機会の少なさ。
自身が納得できる目的に出会うことなど、めったにない。

そんな思いを心の中で、くすぶり続けさせていた男たち。
しかし、死に場所を見つけた、彼ら。
そんな彼らの散りざまの凄まじさ。
その凄まじさが印象的な映画。



非道の限りを尽くす、斉韶。
斉韶には生きる目的も障害もない。
何もかもが自分の思うがまま。
生きる意味も価値も見出せないが故に、
斉韶は非道の限りを尽くすのだろう。

そんな斉韶の非道さを聞き、笑い出す新左衛門。
怒りで笑えたのではない。
自身の生きる意味、死に場所を見つけたからこその
喜びの笑いなのだ。
日々、鍛錬を怠らず己の技を鍛え、来る日に備える。
けれど、その時はいつ?
太平の世においては、そんな時がくる事は望むべくもない、と諦めていた。
しかし、ついにやってきた、その時。
新左衛門を慕って仲間になった11名。
各々も程度の差はあれど、自分の命を燃やす場所を探していたのだろう。

旅の途中で知り合った山の民、小弥太。
侍の価値観、生き方に捕らわれない男。
彼だけは死ぬ為に、この戦に参加したのではない。
面白そうだからという理由だけで参加した男。


ついに始まる、血戦。

斉韶を矢で家の中に誘い込み、
爆死させる目論見は予想通り失敗した。
「小細工はこれまでだ。切って切って切りまくれ!!」
小手先の奇策は、所詮相手の意表をつく事でのみ効果がある。
相手が落ち着いてくれば、もはや正攻法しかない。
圧倒的に有利な場所からであっても、
矢が飛んでくる方向が分かればかわすのは容易い。
そして、いつまでも有利な立場を維持はできないだろう。
しかし、それ以上に彼ら12人は侍として切り死にたかったのだろう。
自らの生を全うするために。


今までは全てが思い通りだった斉韶。
しかし、今日は勝手が違う。
そして脅かされる自分の命。
無駄に生きるだけなら、この世はなんとつまらないものか。
しかし、死を意識すれば命の有難さも感じることができる。

自分の生命を奪う為、そして守る為、多くの者が命を落とす。
これこそが侍の本当の姿、そうあらねばならない姿なのだ。
そんな姿を見ることができた、今日という日。
だからこそ、今日という日が生きていて一番楽しかったのだろう。

飾りならば黙って飾られていれば、いいものを。
唯一、その台詞にのみ、本気の激怒を見せた斉韶。
それは、それが本当のことであり、
そうあるべきである事を知っていたから。
しかし、そうは成りたくなかったからこそ、
彼は人の道を外れ、非道を尽くしたのだろう。



侍は面倒なもの。
自身の命を懸けなければ、自らの人生、生き方を全うできない。
たった一人の非道を正すために多くの命を奪い無駄な犠牲を強いた。
そんな生き方に美徳を感じ、命を散らした。
確かに面倒なものなのだろう。

そして、侍は、つまらないもの。
自然を相手に生きていれば、友を殺すこともなかった。
愛する者を心配させることも、悲しませることもない。
最後に生き残った二人は、だから侍を避け、捨てたのだろう。



死に場所を見つけた、12人の男たち。
そんな彼らの散りざまの凄まじさ。しかし、その虚しさ。
そんな凄まじさと虚しさが印象的な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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