サラエボの花  
2012.04.12.Thu / 20:16 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






サラエボ紛争が終了して、はや10年以上。
しかし、戦争の傷跡は、未だ癒されず、
人々の生活に暗い影を落としている。

愛する娘の為に戦争の傷の痛みに懸命に耐える母親。
しかし、普通には暮らせない。暮らす事が出来ない。

会ったことが無い父親への憧れ。
その思いを抑えられない娘。

母親が隠していた秘密を激情に任せてしゃべってしまった時、
しかし、その時から二人の新しい関係が始まるのだろう。
共に痛みに耐える生活が。
けれどお互いへの愛情がその痛みを和らげることだろう。

時代の傷を乗り越えようとする
母と娘の愛情の静かな輝きが印象的な映画。




娘と二人で暮らす、女性、エスマ。
娘との生活の為に、ナイトクラブで夜遅くまで働く女性。

エスマの娘、サラ。
あった事もない父親に憧れ、
父をシャヒードとして慕っている少女。
エスマが抱えている秘密。
それは、サラが私生児である事。
かつて敵であった名もない兵士たちの誰かが彼女の父親。

娘の為に懸命に生きるエスマ。
しかし、彼女を襲う様々な困難。
貧困、娘の修学旅行費もままならない。
男たちに対するトラウマ故に気になる男性にも心を開けない。
娘が精神的な病を抱えていないかどうかの不安。
けれど、休む間もなく働き続けるエスマ。
それが母親の無償の愛情なのだろう。
例え父親が見ず知らずの男であり、憎悪の対象であったとしても。

何も知らない娘が父親の事を尋ねてくる。
髪の毛の色が父親似である事を知った時のサラの笑顔。
しかし、その笑顔をまともに見る事が出来ないエスマ。

遂に全てをサラに告白してしまうエスマ。
本当はもっと冷静に説明すべき大切な事。
けれど、暗く影を落とす生活の歪みの為に、
あのような形で感情が爆発してしまったのだろう。

しかし、エスマはサラを強く愛している。
そして、サラも同様だ。
素直な気持ちでお互いを見つめれば、
この深くて暗い溝も埋める事が出来るのだろう。
髪の毛を切ってしまったサラは、同時に父親への想いも断ち切ったのだ。
それは明日を母親とともに生きようと決意した彼女の儀式のように感じた。

この映画に登場する人々は皆が戦争の傷を心に持っている。
けれど、生きてゆく。明日をよりよいものにする為に。


重く心にのしかかっていた母親の秘密。
それを隠しながらも懸命に生きようとした母親。
そして秘密がばれた後でさえ、お互いを愛そうとした親子。
娘に対する母親の愛情、そして、母親に対する娘の愛情。
それは、どんな悲惨な秘密でさえ壊すことは出来なかったのだろう。

自身の未来、家族、全てを奪ってしまった戦争。
その悲惨の中でさえ娘に対する愛情を生きがいとして見つけ出した母親。
時代の傷を乗り越えようとする母と娘の愛情の静かな輝きが印象的な映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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