ジョンQ  
2003.09.05.Fri / 17:42 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。

サスペンスと社会問題、親子の愛情と医療制度の問題など、
さまざまな要素がつまった、とても欲張りな映画です。
そういう欲張りな映画に限って、中途半端、消化不良、どっちつかず、
となりやすいのですが、デンゼル・ワシントンの見事な演技によって、
ひとつの傑作映画として、成立しています。
この映画の感じ方の分かれ目は、見る人が、ジョンQの行動を受け入れられるかどうか、
に掛かっていると思います。
つまり、他人を犠牲にしたり、法を犯してまで息子を助けようとする行為を
許されないように感じた場合は、この映画の評価も低いのかもしれません。
また、自分がこのような立場であったら、ここまでするだろうか?
という疑問や、息子のためには親は死ぬものなのだ、死ねない親はおかしい、
という押し付けにも似た脅迫感を感じるかもしれません。

それでは、私はどうかといいますと、
確かにジョンQの行いは、他人に迷惑をかけてはいますが、
私の中では、許されるのではないかと思います。
それは、彼自身が自分の罪深さを熟知していることと、
すべてが終わった後は、罪を償う覚悟があるからです。
決して、八方ふさがりで切れた訳ではありません。
それだけの覚悟がある彼に、「お前のやっていることは法を犯している。」とか
「法に従い、あきらめるべきだ。」とは、私にはとてもいえそうにありません。

自分の罪深さを熟知していることや、彼の罪を償おうとする覚悟は、
弾丸を一発しか持っていなかったことによく表されている気がします。
一発だけであれば、最悪の場合においても人を傷つけないし、
自分が死を選ぶことにも使えます。
私には、彼が最初から自分の心臓を与えることを前提としていたようには思えません。
それは、自分の息子がリストに載ったときの喜び方などに表れているように思います。
しかし、一発の弾丸が彼の覚悟、最悪の場合は死を選ぶ、ことを表しているように感じました。

そして、今という時代ほど、家長たる亭主の威厳が奪われている時代はない気がします。
ジョンQは、よい父親であり、よい人間です。
しかし、仕事を減らされ、車をとられ、息子の命すら救えません。
そして、自分の息子には、
「余裕があったら金を儲けろ。他人を押しのけてでも金を儲けろ。」
「わたしのようになるな。」
とまで言わざるをえません。
しかし、その後に、
「人には親切にしろ」
という矛盾したことも言っています。
つまりは、前者は彼の本音ではないような気がしました。

彼がこのような惨めな状況にいるのは、彼という人間が悪いわけではありません。
彼の力が及ばないところで、彼から家長たる威厳を奪っている存在、仕組みがあるのです。

「世の中の何かが間違っている。それが何かは分からないけれど。」
このような状況になったのは、一体何が悪いのか?
多分、いろいろなところが少しずつ悪いのかもしれません。
だからこそ、いったい何が悪いのか、見えにくい世の中になっているのでしょう。

何が悪いのかは分かりませんが、しかし、
持つものと持たざるものの間には、
厳然として、大きな隔たりがあります。
法や国は「人々は平等である」といっているにもかかわらず、
命が助かるものと助からないものの差がそこにはあります。

このような惨めな状況にいて、
責任感が重い彼には、妻が彼をなじる言葉に耐えられるわけもありません。
「自分が何とかしなければ。」
確かに、父と子の愛情が彼を動かしているのは事実ですが、
彼の責任感、家長としての責務を果たそうとする気持ちをも、彼を動かしている要因です。

というわけで、彼の「最後の決断」は、彼の性格等を考えれば、
それしか選びようが無い選択のように思えました。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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