ルルドの泉で  
2012.05.10.Thu / 10:01 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。






淡々と進むストーリー。
出来事といえば、ある女性に起こった奇跡。
しかし、それ自身も、この映画では劇的に描かれているわけではない。

けれど、目が離せない。
人々の思い、考えが画面から濃密に伝わってくる。
努力は報われるのか?
祈りは通じるのか?
奇跡は起こるのか?
なぜ、彼女なのか?
なぜ、私ではなかったのか?
神が奇跡を起こす人を選ぶ基準とは?
果たしてこれは一過性のものなのか、永続的な奇跡なのか?

奇跡を信じて祈り続ける人々の苦悩。
奇跡を目の前にした人々の戸惑い。
そして、それを支え見守る人々の思惑。
そんな想いを通して見えてくる宗教の意味。

将来に不安を抱えながら、しかし、
ラストでは微笑みながら車椅子に座る女性。
そんな彼女を通して見えてくる生きることの意味。

交錯する人々の意識の濃密さが印象的な映画。




手足が不自由な女性、クリスティーヌ。
自身で人生を決めたい。普通に暮らしたい。
けれど、それは絶望的な願い。

似たような境遇の人々が奇跡を信じて祈りを捧げる。
映画の最初の部分は、ルルドという場所の観光巡りのようなシーンが続く。

なぜ奇跡は起こるのか?
どのようにすれば自分の身に起きるのか?
神は自由なのか、不自由な存在なのか?
自由な存在ならば、なぜ多くの困った人々を助けないのか?
それらはルルドで祈りを捧げる人々には切実な疑問。
けれど、
神は体を癒すのではない。心を癒すのだ。
苦し紛れとも感じられるが、神父は常にこう答えるのだろう。
いままでも、そして、これからも。
手足が不自由な為に、何も自分ではできないクリスティーヌ。
ぞんざいに扱われても、いつも笑顔。それは諦めにも似た心情からなのだろう。
普通に暮らしたいと祈っても、
普通とは何か。今の自分と他の人とは何が違うのか?
そう、現状に満足するように諭される。
それは確かに正しいのかもしれない。けれど、彼女には酷な話ではあろう。


自由に動くようになった手足。それはクリスティーヌに起こった奇跡。
しかし、周りは複雑な想い。
信心深さで言えば彼女であるはずが無い。では、なぜ、彼女なのか?
果たして彼女に奇跡を享受するだけの人徳が備わっているのか?
なぜ、私ではなかったのか?
それでは、神が奇跡を起こす人を選ぶ基準とは?
奇跡が起こる前まではお互いをいたわっていた。
けれど、クリスティーヌだけが、この苦しみから抜け出すことができた。
彼らの疑問には、当然のことながら、彼女に対するやっかみの思いも
含まれているのだろう。


甲斐甲斐しくクリスティーヌの面倒を見てきた母親。
しかし、手足が自由に動くようになれば厄介者。
それでも娘の傍を離れることができないでいる。


最後に行われる交流会。
その席上、倒れこむクリスティーヌ。
果たして奇跡は一過性のものなのか、それとも、永続するのか?
一過性だとすれば、それは奇跡などではない。病状が若干の回復をしただけのこと。
そして、クリスティーヌにとっては、とても残酷なこと。


宗教の意義とは、きっと、目の前に起こったことを、如何に受け止めるか、
それを考えることなのだろう。
奇跡は限られた人にしか起こらず、
それは単に病状が回復しただけのことなのかもしれない。
世の中は、そんな不条理に満ちている。
でも受け止め方しだいでは、不条理な世界も幸せに満ちているようにすることができる。
しかし、そのような心構えができる人は少ない。この映画のように。
けれど、そのような心構えができれば人は幸せになれるのかもしれない。

将来に不安を抱えながら、しかし、
ラストでは微笑みながら車椅子に座るクリスティーヌ。
彼女は、この不条理な世界を幸せに生きる方法を見つけたのだろう。

交錯する人々の意識の濃密さが印象的な映画。

* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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