セイジ -陸の魚-  
2012.05.31.Thu / 10:28 
「ネタバレ」あり。ご注意願います。




世界には
君一人きりじゃない。


原作は未読です。


この世界は哀しみにあふれている。
そして、自分はあまりに無力で、
この世界の哀しみをどうする事もできない。

突然の惨劇。
不条理な悲劇。
それを前にして心を閉ざしてしまった少女。
しかし、男は、世界にいるのは君だけではない事を伝える。
同じだけの哀しみを背負っているのは君だけではないという事を。

如何ともし難い哀しみ。
しかし、同じ哀しみを他人も持っていると分かった時、
そして、同じ絶望の想いを共有できると理解できた時、
人は絶望から立ち上がる事ができるのだろう。

この世界の果てしない絶望。
しかし、それでもなお生きてゆける強さを描いた映画。




この世に絶対的に正しい事は存在しない。
正しさの反対には同じだけの正しさが存在して、
それらが衝突すれば哀しみが発生する。
人は生きるために食べる。食べるために働く。
それはあたかも生命維持装置。
生きたいと思えばこそ、充実した生活も送れる。
けれど、生きたいと思えなかったとしたら、、、
毎日は灰色だ。

そして、生きる為に消費している全ては、何かの犠牲の上に成り立っている。

幸せに暮らしたい。
望むものは普通の生活の普通の幸せ。
しかし、かわいい子供には会えない翔子さん。
奥さんとは別居しているらしいツノ先生。

この世界は哀しみに溢れている。
そのすべてを達観している、セイジ。

この映画の冒頭は二度繰り返される。
一度目は旅人の視点で。
二度目はセイジが何をしたかで。

旅人は、その時に何が起こったかをすべては理解していない。
死んだイノシシがどうなったのか。翔子さんが抱えている悲しみ。
けれど、セイジはすべてを理解して行動している。
イノシシの死を無駄にしない為に。
翔子さんの悲しみは救うことができない事を。
繰り返される冒頭でセイジという人間がよく分かる。
この描かれ方は、とても面白い。


タツヤとマコトは自分の人生を生きている。
けれど、まだ自身の生き方を始めていない、カズオ。
とても中途半端な立ち位置で生きている。
家業を手伝い、傍から見ていれば、そうは見えない。
けれど本人は、自分が半人前で出発点にすら立っていないように感じているのだろう。
それは、自身が、かっこ悪い未熟者であるという自覚からくる精神的な苦痛。
それは旅人も同じだ。
だからこそ、腕を組んだのだろう。
一人では出発点にすら立てない。
しかし、痛みを理解しあえる人間が支えと励みになるのだろう。


りつ子ちゃんを襲った突然の悲劇。
それ故に心を閉ざすりつ子ちゃん。
生きたいと思えば、食べる、働く。
けれど思えなければ灰色の毎日。


妹のフィルムを燃やしてしまった。
それは、とても大切な思い出の品のはず。
けれど、セイジは怒らない。勝手に見たことすらも。
セイジはすべてを理解しているのだろう。
旅人がフィルムを見たくなった理由。
それが見つかり、すまなく思っている心理。
物はいつかは壊れる。その時が今来たのだ。旅人だけが悪いわけではない。
すべてを自然に受け入れるセイジ。そうしなければ、この世界は哀し過ぎる。


りつ子ちゃんを前にセイジがとった衝撃的な行動。
妹への贖罪もあったかもしれない。
けれど、セイジが、りつ子ちゃんに伝えたかったこと。
世界には君一人きりじゃない。
自ら同じ肉体的な苦痛を分かち合うことで、
精神的な痛みさえも共有できることを伝えたかったのだ。


この世界の果てしない絶望。
しかし、それでもなお生きて行ける強さを描いた映画。
* テーマ:映画感想 - ジャンル:映画 *
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