潜水服は蝶の夢を見る 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




体の自由を失った男。
しかし、まだ心の自由は失われてはいない。
人間の尊厳とは、他人にどう扱われ、
どのように思われることに依存するのではない。
自分が自分自身をどう思うかに依存しているのだろう。
男に残された心の自由。
その想像力と記憶で自由に羽ばたき、自らの尊厳を守った男。
美しい映像とともに、人間の無限な可能性を描いた映画。



突然の発作により、体の自由を失ったジャン。
鏡に映った変わり果てた自分の姿。
まるで赤ん坊のように体を洗ってもらう自分。
そんな状況に、死にたいと最初は願ったが、自らを憐れむのを止める。
なぜなら彼には、まだ残された自由があるからだ。
それは、彼が持つ記憶と想像力。
企画途中であった本を別な形で仕上げようとする。

続きを読む

ゾディアック 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




ゾディアックと名乗る男が、
公認されているだけでも5人の人間を惨殺し、
新聞社に脅迫状を送り続けた、60年代に発生した連続殺人事件。
しかし、その怪奇性や猟奇性を描こうというよりは、
この事件を記録として残そうとした姿勢が強く感じられる映画。
この事件に関わった人々は三種類に分けられるように感じられる。
ゾディアック自身、もしくはその名前を語り、
世間を騒がせ、支配した気になり、快楽に浸った人々。
自らの名前が公となり、ゾディアックの攻撃の対象となり、
被害を被った人々。
そして、家族を犠牲にしてまで純粋に謎解きを楽しんだ男。
三者三様のかかわり方を通して、
ゾディアック事件を忠実に記録として残そうとした映画。
そして、私には、人が謎との距離をいかにして取るのかが印象的な映画。


続きを読む

戦場のアリア 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




同じことに感動し、同じことに心を痛めた。
同じことに嫌気がさし、同じ事を楽しんだ。
そして分かった。敵と思っていた人々も同じ人間。
悪魔などではない、同じ感情を持った人間であることを。
そんなことがわかった時、
見知らぬはずだった人々は良き隣人となり、
もはや、殺す対象としては考えることができなくなってしまった。
この映画では、それらが丁寧に、そして説得力をもって語られる。
しかし、それでも国は、相手を殺すことを強制する。それは、宗教でさえも。
戦争というものの、救いがたさ、
しかし、人は変わることができるということが印象的な映画。



映画の冒頭。国と宗教に洗脳されてしまった少年たちの独白。
それは国と学校、宗教による洗脳の結果なのだろう。
「戦争が始まった。俺たちの人生が開けた。」
そんな言葉を発して、率先して戦争に志願する兄弟。
これも洗脳の結果なのだろう。

最初はきっと厭戦気分からだったのだろう。
クリスマスにも家族には会えず、心も休まらない。
しかし、戦場にもたらされたクリスマス。
楽しげなバグパイプの音色、美しいテノールの歌声が、
一日限りの停戦をもたらした。

続きを読む

親密すぎるうちあけ話 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




愛にはさまざまな形がある。
初対面ゆえに、なんのしがらみもなく、
だからこそ、なんでも話せた。
なんでも話せるが故に開かれてゆく心。
ありえそうで、現実的ではない。
不思議な雰囲気、神秘的でいて、しかし、どこか温かい。
たとえ当事者たちが意識していなくても、
そこに駆け引きが発生し、スリリングでいて、とても艶っぽい。
明らかにこれも恋愛の一つの形なのだろう。
愛にはさまざまな形がある。
そんなことが印象に残った映画。



離婚をして、安定はしているものの、
退屈な日々を過ごしている男、ウィリアム。
結婚をしてはいるものの、愛のない生活を送る女、アンナ。
アンナが間違って開いてしまった扉。
それが、二人の心の扉を開いてゆく。

続きを読む

ジェイン・オースティンの読書会 

「ネタバレ」あり。ご注意願います。




自らが心の底で欲している自らの幸せ、願望。
しかし、人は誰もが、そこにまっすぐには歩んではいない、歩むことができない。
偏見、プライド、嫉妬、義理、友情、良識、そして不幸な出来事。
人生の岐路に立った時、そんな感情や出来事が入り混じり、
幸せへの判断がつかないでいる。
こんな時、ジェイン・オースティンならどうするのか?
いいえ、自らが自らに、そう問いかけることで、
自らが本当に欲する道が見えてくる。
物語の力を借りて、自らの本心にたどり着く人々を描いた映画。


続きを読む